2015-05-23 ウッドデッキ
太陽光パネル支える県産材
当社が一昨年より長野県林務部が募集した「信州の木 先進的利用加速化事業」として取り組んでまいりました<太陽光発電パネル向け 木製架台>が地元紙信濃毎日新聞で掲載されました!
太陽光木製架台
長野県環境部が主導し、産学官連携のエネルギー団体を組織する例は珍しく、当社も加盟する「自然エネルギー信州ネット」で知り合ったのが、記事に出てきますイースリー(地域エネルギーイニシアチブ)の山本さん。八ヶ岳山麓にある「長野県農業大学校」用地に太陽光発電事業の案件があることを知り、校長様が木材利用に積極的とのことで、公募に応募しました。
使った木材は何と木曾ひのき。当社が加盟します「長野県産材販路開拓協議会」でもご一緒の南木曽の「勝野木材」さんは、長野県内で一番の製材量を誇る最新の製材工場を運営されており、しかも取り扱いは殆どが国有林から出てくる木曾ひのき。木曽ヒノキと聞くと「高そう~」って思われるかもしれませんが、樹木だった木曽ヒノキの根っこに近い元玉から太いのですが、真ん中位の2番玉、先端の方の3番玉と先に行くほど細くなるのはご想像の通り。だから住宅でよく使われる4寸角や3.5寸角は2番玉までで大量に流通のニーズがありますが、同時に出来てしまう3番玉は3寸(90mm)程度。この3寸角って現在の建築では余り使う用途がありません。この三寸角を大量に使用できる用途は無いかと考えた時、太陽光パネルの架台に使えたら良いのでは、と思いついたのです。
当社は木材の長持ちに関してはプロフェッショナルですが、設計や構造計算は出来ません。しかも構造計算は通常S造(鉄骨造)やRC造(鉄筋コンクリート造)に対して大学等で学ぶので、木造の構造計算が出来るところって意外と少ないのです。一般の住宅レベルならCAD(ComputereAidedDesign)ソフトに構造計算機能が付いていますが、ちょっと複雑になったりすると材料強度や耐積雪、風圧、引き抜き、たわみ、長期荷重など難しくなってきてしまいます。そこで今回は当社が加盟する日本建築家協会(JIA長野県クラブ)正会員で駒ヶ根の伊藤構造計画工房の伊藤さんに構造計算・設計をお願いいたしました。
太陽光の設備は建築基準法に適用されない「構造物」なので、建築基準法に則る必要は無いのですが、日本工業規格(JIS)の中に太陽光発電パネルに求められる条件が記載されていました。ただ、補助事業が始まって調べてみると、一般的に設置されている太陽光発電設備はこの基準に必ずしも合致せず、特に積雪や風圧に対する基準が記載に無いため、建築基準法レベルで考えると相当頑丈になってしまい、一般的な架台の価格からすると高価になってしまうことが分かりました。
一昨年の大雪の際は全国各地でも長野県内でも積雪による被害が発生しましたが、太陽光発電も同様で鋼製単管による架台などは、クランプ(接合金物)の摩擦力が積雪荷重に耐え切れず単管下方にずり落ち、太陽光パネルに単管先端が突き抜ける事故なども多く発生したようです。(保険で修理できればOKって事でしょうか?)また積雪が多かったのでパネル設置高さが十分ではなく、除雪するまでの間に発電が出来ないといった不具合もあったようで、比較的多雪地である長野県では積雪による発電障害を防ぐ意味でも、少し高めに設置することが大切です。
その他、基礎工事が鋼製架台は高価になるため、木材を土に生け込むことで基礎工事費の低減をはかったり、現場での組み上げを簡単にできるように工場でパネルを作ってから現場搬入するなど工数低減も図りました。木材も高耐久性の桧ですが、穴あけ・切削・切断などプレカットを行ってから加圧注入するなど耐久性を確保。金物も長期耐用を考えてステンレス製に。構造も建築基準法レベルにし、積雪を考慮し設置高さ高くするなど、長く信州の地で安心・安全に発電できるよう配慮しましたが、結果としては一般の建設基準法に合致しない簡易な単管架台に比べ高価なものになってしまいました。
しかし木材はアルミに比べ、生産時のCO2が計り知れないほど少なく、間伐対策が治山治水・害獣被害などにも大切であり、未利用木材の長期活用は社会貢献とCO2長期固定にも役立ちます。また発電所の景観の保全にも一役買っており、発電事業終了後もゴミにならずバイオマス発電などの燃料にも使えます。
今後はより安価に提供できるよう改良も加え、長野県の森の保全と環境貢献出来るよう努力していきます。
以下、記事のテキストです。
太陽光パネル支える県産材 木製架台使い発電開始
茅野市と松本市で発電や建設などに関わる業者らが、太陽光発電ハネルを支える木製の架台を考案し、茅野市で発電事業に使い始めた。アルミなどの金属を使った一般的な架台より自然景観になじみやすいとしている。
観光地などにバネルを設置する際の影響を減らし、県産材の活用を広げる効果にも期待している。
景観への影響減らす狙い
県林務部によると、木製の架台はさびに強く、海沿いの地域などで注目されているが、活用例は少ないという。県産材を便った大規漠な架台の設置は、県内では初とみられるという。
施行に携わつた太陽光発電設備などの設計施工会社イースリー(茅野市)によると、架台にはヒノキとスギの間伐材を使用。木造住宅とほぼ同じ頑丈な造りで、1基当たり20枚の発電パネルを載せられる。幅8.4M、奥行き4.2Mで、雪に埋もれないよう2.3Mの高さがある。
1500㎡の用地に18基設け、うち10基余りを木製とした。工期は約2週間。
出力は計150キロワットで、4月中旬から売電を始めている。
県の「信州の木 先進的利用加速化事業」の補助金2千万円を使った。
木材の防腐処理に当たった住宅メンテナンス工事などのランバーテック(松本市)によると、
架台の耐用年数は約30年。発電票業が終わり、解体後は廃材をバイオマス発電に使える。
架台1基当たりの設置買は約150万円。アルミ製の約3倍かかる。
イースリーの山本永社長〔53)は「現状では売電収入で設置費を回収するのは難しいが、
仕様の変更などで費用削減は図れる。架台の木製化が進むよう改良を図っていきたい」と話した。